2021年10月7日、東京高裁で第48回三者協議がひらかれた。

弁護団が6月30日に出した検察官意見書(万年筆関連)についての求釈明書に対して、検察官は10月4日に回答を提出。弁護団は、これもふくめて、万年筆に関する検察官意見書に対する反論、反証を提出することにしています。

また、検察官は10月6日に、福江意見書について求釈明書を提出してきました。弁護団は、三者協議の場で、この検察官の求釈明がまったく的外れで、不当なものであると述べて、反論の意見書を提出することを伝えました。

協議では、スコップ関連の証拠開示について、「検察官は、警察にあったものも含めて高検に取り寄せてあり、再度調べたが、弁護団が求めるものは見当たらない」と回答したが弁護団は、この回答に納得できないとして何らかの意見を出すことにしている。

弁護団は、今後、万年筆、殺害方法に関する検察官への反論、自白についての新証拠を提出し、それをふまえて鑑定人尋問を請求する。次回の三者協議は2022年1月下旬におこなわれる。

弁護団は、三者協議に先立ち、10月4日に、筆跡に関する検察官意見書に対する反論の補充書と新証拠4点を提出し新証拠は246点になった。検察官は3月に弁護団が提出した筆跡についての新証拠すべてに対して再審理由とはいえないと主張する意見書を提出した。弁護団はこの誤りを明らかにする新証拠と補充書を提出した。

新証拠の1つは、アメリカの刑事手続法についての我が国有数の研究者である笹倉香奈・甲南大学教授による意見書。アメリカにおいても従来、筆跡鑑定がおこなわれて裁判の証拠とされてきたが、1980年代末に、筆跡検査がどこまで有効なのかを実証研究した論文をきっかけに、こうした従来の形態比較による筆跡鑑定の科学性に疑問が指摘されるようになったこと、実際に筆跡検査が証拠として採用されなかった裁判例が報告されている。

一方、狭山事件で有罪判決が証拠の主軸とした3つの筆跡鑑定は、いずれも人が字の形を観察して類似性や相違性を見て同筆かどうかを判定する、いわゆる伝統的筆跡鑑定で警察組織の鑑定人ばかりが鑑定していた。

検察官の意見書は、ことあるごとに、弁護側の筆跡鑑定よりも警察による3鑑定の方が専門家によるもので信頼性が高いと、なんの具体的根拠もなく主張しています。しかし、笹倉意見書が報告するアメリカにおける筆跡鑑定の科学性をめぐる研究や判例、我が国における判例や警察で鑑定してきた人の指摘にも反する、まったく間違った意見です。

新証拠の2つめは、福江鑑定人による意見書です。

検察官意見書は、福江鑑定について、同じ人でも書くときの書字環境によって筆跡に違いが生じることを考慮していないとしていますが、まったく見当違いの批判です。

福江鑑定は、同じ人でも書くたびに字形が違う(書きムラがある)ことを前提として、検査資料の筆跡を重ね合わせたときのズレ量をコンピュータを使って計測し、そのズレ量(筆跡の相違度)が、同一人の書きムラなのか、別人の筆跡の違いなのかを統計的に判定している。検察官意見書は、福江鑑定の手法についてのケチつけのような批判をしていますが、すべて間違っているか的外れなものであることを福江意見書、補充書は指摘しています。 

新証拠の3つめは、第3次再審で、石川さんの読み書き能力を鑑定した森実・大阪教育大学名誉教授による補足鑑定書です。検察官意見書は、石川さんが事件発生前に勤めていた工場で提出した早退届や通勤証明交付願において筆勢・筆速のある漢字を書いているとして、もともと脅迫状を書ける書字能力があったと主張しています。

これに対して、森補足鑑定は、それら書類に書かれている漢字は名前と住所、駅名などのわずかな文字であって、(本件前に)「筆勢・筆速のある漢字」を数文字書いていただけでは、読み書き能力があったことの証拠にはならないと指摘。また、石川さんが書いたものを見ていくと一貫して名前は漢字で書いています(しかし「石川一夫」と間違って書いており、「石川一雄」と正しく書けるようになったのは浦和拘置所に移って以降)が、名前以外はほとんどひらがなであり、ひらがなも含めて誤字や誤用がたくさん見られます。名前は書き慣れているからであって、名前を筆勢・筆速のある漢字で書いていたから脅迫状を書ける書字能力があったなどとは言えない。

検察官があげる事件前の文書8件には文書1件に出てくる漢字は全部で66文字(つまり文書1件につき漢字8文字)ですが、その約4割が誤字です。一方、脅迫状には漢字が67文字ありますが、誤字はまったくありません。(当て字はありますが)森補足鑑定は、石川さんの当時の読み書き能力は小学校1年生終了以前の段階と見られ、脅迫状を書くことはできなかったと考えられるとしています。


 有罪判決では石川さんは死体を抱きかかえて約200メートルの距離を運んだとされるが、事件当時の航空写真が証拠開示され、それをもとに専門家が調査分析した結果、幅45センチ程度しかない狭い箇所が約40メートルもあった。さらに上記写真のA地点では小麦畑と茶畑が接して45センチよりも幅が狭い地点があり、死体を抱えた状態で通れないと考えられ、運ぶことは不可能といえる。

 

事件から58年 全証拠の開示を

 狭山事件発生後の5月11日に死体発見現場から約125メートルの麦畑で発見されたスコップは石川さんがかつて働いていた養豚場から盗んで死体を埋めるためにつかったものであると自白を離れて有罪判決と認定されました。

弁護団は、昨年末に、スコップに関して、平岡義博立命館大学教授の意見書を提出するとともに、証拠開示勧告申立書を東京高裁に提出しました。

当時の埼玉県警鑑識課員による鑑定では、スコップ付着の土と比較する対照資料として、死体発見現場そのものではなく、死体発見現場付近に穴を掘って土を採取しており、弁護団は、鑑定の経過などを明らかにする必要があるとして、土を採取した際の捜査報告書類、採取記録(穴などの写真、ネガ、スケッチ等)や採取現場を指示した書類などを証拠開示するよう検察官に求めました。

しかし、検察官は、5月に「弁護人が開示を求める証拠であって、未開示のものは見当たらない」とする回答の意見書を提出。弁護団は、7月に、さらに開示を求める意見書を提出しました。

スコップ付着土壌の鑑定をおこなった埼玉県警鑑識課の星野技師は、竹内・狭山署長から電話で依頼を受けて対照資料(土壌)を採取したと報告書に書いており、少なくとも、どの場所の土壌をどのように採取するよう依頼したかの記録が残っているはずです。

星野鑑定人は、スコップについて附着物の油脂についての鑑定もおこなっていますが、スコップ発見の翌日の5月12日に竹内狭山署長が星野鑑定人に対して鑑定嘱託書を出し、同夜に星野鑑定人から特捜本部に電話で鑑定結果の中間報告があったという記録や翌13日にも電話で中間報告があったという記録など、特捜本部と星野鑑定人とは密に電話のやりとりをしており、その内容は逐一記録されていたことが開示された証拠によって明らかになっています。

そのことからすれば、スコップ付着の土の鑑定資料の採取にあたって、埼玉県警察本部の警察技師である星野鑑定人にどのように説明して現場における対照資料の採取場所を特定し依頼したのか等の記録が残っているはずですし、油脂の鑑定と同様に、星野鑑定人から特捜本部へ報告した記録も残っているはずです。弁護団は、こうした点を指摘し、狭山警察署やさいたま地検も含めて、再度、精査することを求めています。

 

●死体を抱きかかえて運ぶことは不可能

 

検察官は、6月30日付けで弁護団が提出した万年筆関係の新証拠、とりわけ下山第2鑑定に反論する意見書を提出した。検察官は、昨年5月に万年筆関係について意見書を提出し、それに対して弁護団は、昨年12月に、反論の意見書、新証拠を提出しました。今回の意見書は、下山第2鑑定を中心として、再度、弁護側に反論するものです。

弁護団は、この検察官意見書に対しても誤りを明らかにし、徹底して再反論することにしています。

検察官は、昨年12月に、弁護団が提出した殺害方法、逆さづり、後頭部の出血(犯行現場における血痕の不存在)、死体運搬についての新証拠について、反論の意見書を提出し、あわせて、石山昱夫・帝京大学医学部名誉教授による意見書を提出し、ことし3月には、筆跡について弁護団が提出した新証拠に対する意見書を提出しています。弁護団は、6月に提出された意見書を含めて、検察官意見書の誤りを明らかにする新証拠や自白についての新証拠を今後提出することにしています。

7月1日には、検察官が昨年末に提出した死体運搬についての意見書の誤りを明らかにする土地家屋調査士による流王意見書を補充書とともに提出し新証拠は242点になりました。
 
2018年12月に提出した流王報告書は、証拠開示された当時の航空写真を分析し、死体を殺害現場(雑木林)から芋穴まで運んだという運搬経路上に、45センチほどしかない狭い区間があり、その中にさらに狭い地点があり、死体を前にかかえて運んだとは考えられないことを指摘した土地家屋調査士の報告書で、自白が虚偽であることを明らかにしたものです。

弁護団は、今後、準備中の新証拠、検察官意見書に対する反論の提出をふまえて、鑑定人尋問を請求することにしています。

 

●第47回三者協議

2021年7月19日、東京高裁で第47回三者協議がひらかれました。東京高裁第4刑事部の大野勝則裁判長と担当裁判官、東京高等検察庁の担当検察官、弁護団からは、中山主任弁護人、中北事務局長などが出席。

弁護団は協議に先立って、スコップに関わる証拠開示について、検察官の「不見当」とする回答に対する補足意見書を提出しました。また、6月30日に出された万年筆に関する検察官の意見書について求釈明書を提出しました。協議では、スコップ関連の証拠開示について、弁護団から意見書の内容を説明し、裁判所は再度検討してほしいと述べました。

 

次回の三者協議は10月上旬におこなわれる予定です。10月31日には狭山事件の確定判決となっている東京高裁の寺尾判決から47年を迎えます。9月には全国狭山活動者会議、住民の会交流会を開催するとともに、10月には東京での市民集会開催も予定されています。


2021年4月27日に第46回三者協議が東京高裁でひらかれました。東京高裁第4刑事部の大野勝則裁判長と東京高等検察庁の担当検察官、中山主任弁護人をはじめ弁護団10人が参加しました。

 協議で検察官はスコップ関連の証拠開示について検討しているとしたうえで、捜査資料があれば提出するとしました。次回三者協議は7月中旬に行われる予定です。

 寺尾判決では死体発見現場近くで発見されたスコップが死体を埋めるのに使われたもので石川さんが以前働いていた養豚場のものを盗んで使ったと認定し有罪の根拠としました。

スコップは死体発見現場から約125メートルしか離れていない場所から発見されました。そこでは連日、大掛かりな捜索がおこなれていた場所なのに発見されませんでした。また、スコップについていた土は死体が埋められていた場所の土と一致していないなど不自然な点が多く、発見されたスコップが死体を埋めるのに使われたものでないことは明らかです。

弁護団は昨年12月に平岡第三意見書を提出し、死体発見現場付近は地形の形成過程から非常に複雑な堆積の様相をしており、対象資料の土を採取した穴が死体発見現場の近距離であっても土の堆積状況が異なる可能性が高いと指摘した。なぜ死体発見現場から土を採取なかったのか鑑定結果を明らかにする必要があり、土を採取した際の捜査報告書類、採取記録や採取現場を指示した書類などを証拠開示するよう求める証拠開示勧告申立書を提出していました。

 

 

 石川一雄さんがえん罪におとしいれられて5月には58年を迎える。早急に鑑定人尋問をおこない、再審を開始すべきである。そのためにも東京高裁、東京高検宛ての再審を求める要請はがき行動に一人でも多くの人の協力を呼び掛けている。


第45回三者協議が2020年12月21日、東京高裁でひらかれました。

協議では、弁護団から、足跡、万年筆、スコップ、血液型に関して提出した新証拠と補充書の説明をおこない、検察官は、これら弁護団が提出した新証拠について、意見書の提出もふくめて、対応を検討するとしました。スコップに関して弁護団が提出した証拠開示勧告申立書についても検討するとしました。弁護団からは、開示を求めている証拠の存否を書面で明らかにしてほしいと求めましたが、現時点では回答できないとしました。

弁護団は、検察官の回答もふまえて、鑑定人尋問の請求を準備すると伝えました。

 次回の三者協議は2021年4月下旬におこなわれる予定です。弁護団は今後、検察官意見書に対する反論を提出するとともに、来年には鑑定人尋問の請求をすることにしています。1977年8月以来43年以上も再審を求め、これまでに241点の新証拠を提出してきましたが、一度も鑑定人尋問などの事実調べがおこなわれていません。大野勝則裁判長が鑑定人尋問をおこない再審を開始するよう求める世論を広げることが必要です。

 弁護団は12月に、3次元スキャナによる計測にもとづいた足跡鑑定など13点の新証拠と再審請求補充書を提出しました。 犯人が逃げた現場近くの畑の中で犯人のものと思われる足跡が発見され警察が石こうを流して採取し十文ないし十文半の大きさとされていましたが石川さん宅から押収された地下足袋は九文七分でした。警察は現場の足跡は九文七分の押収した地下足袋によってできたもので破損痕も一致するという鑑定書をつくりましたが押収された足袋と現場足跡とは一致しないことを証明しました。

 12月8日に提出した足跡新鑑定は、東京高裁に保管されている現場足跡の石こう型、石川さん宅から押収された地下足袋で作成された対照足跡の石こう型等を、3次元スキャナを用いて立体形状を計測し、そのデータにもとづいて、有罪の根拠となった事件当時の埼玉県警鑑識課員による足跡鑑定(関根・岸田鑑定)を検証したものです。

 

関根・岸田鑑定は、現場足跡と石川さん宅から押収された地下足袋で作成した足跡石こう型について、地下足袋のゴム底のはがれ(破損)が石こう型に印象されている破損痕が両方に見られるとして、足跡の写真(白黒の平面写真)を撮り、その写真上に点を記入して、長さや角度を測って符合するとしています。そもそも、足跡石こう型は立体形状なので、奥行きの情報のない平面写真で足跡の類似性を議論することは無理があります。足跡新鑑定では、関根・岸田鑑定が平面写真上に記入した点を3次元スキャナで計測した立体形状に対応させ、ズレていることを明らかにしています。平面写真上で計測して長さや角度が一致するとして、現場足跡と対照足跡の特徴が符合するとした関根・岸田鑑定の結論が誤っていることが明らかになっています。また、足跡新鑑定は、3次元スキャナによる計測によって、現場足跡と対照足跡の重ね合わせをおこない、「破損痕」とされた部分の3次元形状(立体形状)には大きな差異があり、符合するとは言えないと指摘しています。足跡新鑑定によって、現場足跡は石川さん宅の地下足袋によるものとして有罪の根拠とした寺尾判決の誤りが明らかになっています。


第44回三者協議が925日に東京高裁でひらかれた。大野勝則裁判長が就任し初の三者協議となり、再審を求め43年以上も経ち、鑑定人尋問、再審開始へ裁判長の英断が求められる。

 弁護団は、9月23日に新証拠と再審請求補充書として福江鑑定人による「筆跡鑑定の従来法と新鑑定法について(所見)」「コンピュータによる筆跡鑑定法について(解説)」と題した2通の書面を提出した。

2018年1月15日に裁判所へ提出した福江鑑定書は犯人が残した脅迫状の筆跡が99.9%の確率で石川さんと別人のものだと科学的に証明した。

  弁護団はコンピューターを使って筆跡鑑定を研究する東海大学(当時)の福江潔也教授に鑑定を依頼し犯人が残した脅迫状でくり返し使われていた「い」「た」「て」「と」の4文字を石川一雄さんの筆跡と比較したところ、脅迫状の筆跡と石川さんの筆跡は形が大きくずれていて、99.9%の確率で別人のものだと考えられると証明した。

その後、検察官弁護団とも反論を繰り返し、昨年10月に検察官が福江鑑定の手法によって筆者が同一化か否かを判断することは適切でないと反論した。

 そのことに対して今回弁護団が提出した補充書は、検察側の意見書が「限定的なデータベースに基づく」「問題がある」とくりかえすだけで、何ら具体的に批判していないこと、福江鑑定の「コンピュータによる筆者異同識別」の手法は、2005年に法科学技術学会で発表されて以来、学会発表論文などにおいて科学的根拠があることが示されており、特許も取得されていることなどを指摘した。

  脅迫状と石川さんの筆跡のちがいはコンピュータを使わなくても誰が見ても明らかで、警察側の鑑定のデタラメさがあらためて証明された。

 検察官は、寺尾判決が有罪の根拠の一つとしたスコップに関して、元京都府警科捜研技官である平岡鑑定人が、死体を埋めるのに使われたものとも、I養豚場のものとも言えないことを科学的に指摘した平岡鑑定等について反論する意見書を7月に提出。弁護団は証拠をもとに全面的に反論する予定。

 

 次回三者協議は12月下旬に行われる。


第43回三者協議が2020年6月18日に東京高裁でひらかれました。検察官は三者協議に先だって、弁護団が提出した下山第2鑑定など万年筆に関する新証拠に対する反論を提出。下山第2鑑定について、科学的な反論ではなく、推測と可能性を積み重ねて、発見万年筆のインクと被害者が使用していたインクの違いをごまかし、確定判決や第2次再審の特別抗告棄却決定の判断の通りであるとのべているだけです。弁護団は、再反論する予定です。被害者の使用していたインク瓶が2013年7月に証拠開示され、そのラベルをパイロット社に確認し、インクは当時販売されていたジェットブルーインクでクロム元素が含まれることがわかりました。

  下山鑑定人は、蛍光X線分析装置を検察庁に持ち込み、2016年10月に証拠開示された発見万年筆で書かれた数字のインク、被害者が事件当日の授業で書いたペン習字浄書のインク、被害者が使用していたインク瓶のインクの元素分析をおこない、ペン習字浄書や被害者のインク瓶のインクからは、クロム元素(Cr)が検出されましたが、石川さん宅で発見された万年筆で書いた数字のインクからは、鉄元素(Fe)が検出され、石川さん宅で発見された万年筆は被害者が事件当日まで使っていたインクの成分とちがうことが科学的、客観的に明らかになりました。石川さんの自白通りに被害者の万年筆が発見されたとして有罪の根拠とした確定判決には合理的疑いが生じており、早期に再審を開始すべきです。弁護団は、2020年6月15日付けで再審請求補充書と新証拠1点を提出。石川さんの自白後におこなわれた7月1日の捜索報告書が第三次再審で証拠開示されました。

腕時計は、7月2日に民間人が散歩中に気づいて発見したとされていますが、警察は、それ以前に6月29日、30日の2日間にわたって捜索をおこなっていました。捜索した範囲が図面上に記載されており、腕時計発見場所も捜索範囲内であったことが明らかになりました。しかも、捜索に従事した警察官らの証言などから十分な捜索体制であったことも明らかです。警察官らの捜索で発見されず、その後に民間人が「散歩中にチラッと見えたので発見した」という経過は明らかに不合理・不自然であり、腕時計発見は自白の真実性を補強するとはとうてい言えない、秘密の暴露にはあたらないと主張しています。

 

次回の三者協議は9月下旬におこなわれる予定です。石川さんの無実は明らかです。第三次再審請求でなんとしても再審開始決定を勝ち取らなければなりません


2020年3月19日、東京高裁で第42回三者協議がひらかれました。検察官は三者協議に先だって、弁護団が提出した法医学鑑定(殺害方法、血液型)に対する反証を提出しましたが、そのほかの今後の反論の提出について、つぎのように述べました。

1、下山第2鑑定については、当時のジェットブルーインク(クロム元素を含むジェットブルーインク)が入手できなかったので、実験などはおこなわず、検察官の反論の意見書を提出する。弁護団が提出した原・厳島鑑定(心理学実験にもとづいて万年筆の発見経過が不合理であることを指摘した鑑定)に対する反論とあわせた意見書として、5月中に提出する。

2、スコップに関して弁護団が提出した平岡第2鑑定に対する反証を提出する。次々回の三者協議をメドに提出する。

3、そのほかの論点についても記録を検討し、反論、反証が必要なら随時提出する。

 弁護団は、検察官から反証、反論が提出されれば、再反論することにしています。

 また、現在準備中の新証拠として、3次元スキャナを用いた計測にもとづく足跡鑑定、コンピュータによるデータ分析の手法を用いた取調べテープ分析鑑定、福江鑑定人による第2意見書を、5~6月に提出する予定であることを裁判所に伝えました。そして、その後、事実調べ(鑑定人尋問)を請求することも伝えました。弁護団は3月3日付けで手ぬぐいについて、再審請求補充書と新証拠1点を提出。被害者を縛っていた手ぬぐいは米穀店が得意先に配ったうちのひとつでした。事件直後の捜査で石川さん宅にある未使用の手拭いを警察官が現認し、その後、警察に提出されています。これで、犯行に使われた手拭いは石川さんの家のものではないことになるはずですが、検察官は「義兄宅または隣家から都合を付けて提出した」と主張し寺尾判決はそれをうのみにして有罪の根拠としました。今回の補充書で弁護団は、有罪判決の認定は結論ありきの推測を重ねたもので、開示された捜査資料など、これまで提出した新証拠を総合的に見れば有罪判決に合理的疑いが生じていると主張しました。