被害者の万年筆は別のもの 弁護団が新証拠を提出

 

狭山弁護団は2018年830日に東京高裁へ新証拠を提出。その内容がNHKに紹介されました。 

   被害者の万年筆は3度目の家宅捜索でみつかりました。事件当日まで被害者がつかっていたにも関わらず、発見された万年筆とインクの色がちがうことや被害者の指紋が検出されないなど不審な点が多くありました。 

 

  寺尾判決では被害者が持っていたものと同じタイプだったことが有罪の有力な証拠のひとつとされています。

 

三者協議によって事件直前に被害者が書いた文章が開示されました。それをもとに弁護団はインクの成分鑑定を専門家に依頼。

 鑑定結果から蛍光X線分析でインクに含まれる元素を分析した結果、インクの成分がちがうことを証明でき、有力な証拠とされた万年筆が事件とは関係がないことが明らかになりました。



被害者のインクが検出されず

  2013年に被害者が使っていたインク瓶が証拠開示されました。当時のインクを取り寄せ鑑定した結果、石川さんの「自白」にもとづいて石川さん宅から発見された「万年筆」には被害者が事件当日まで使っていたインクがまったく検出されないことがわかりました。

 これまで裁判所は「被害者が帰宅途中の郵便局でインクを入れ替えた」との推論で裁判のやり直しをしてきませんでした。

 開示された被害者のインク瓶の写真をもとに当時のインクを入手し鑑定したところ、インクを入れ替えれば元のインクの色が微量でも検出されるのにそれがまったくないことが科学的に証明されました。



3度目の家宅捜索で発見

  「万年筆」は石川さん宅の目に付きやすい鴨居から3度目の家宅捜索で警察は石川さんの兄に素手でとらせ、発見されました。

 2度にわたる徹底的な捜索にも関わらず発見されなかったものが、簡単に発見されたのです。

 鴨居の高さは175.9センチ、奥行き8.5センチしかなく、簡単に目にとまる場所でした。

 

 1度目の家宅捜索は12人の刑事により2時間17分かけて行われました。2度目の家宅捜索は14人の刑事により、2時間8分かけて徹底して捜索をおこないましたが万年筆は発見されませんでした。 

 上の写真は家宅捜索の時のものです。写真奧の鴨居前には脚立がおかれています。脚立にたって鴨居を捜索したのはあきらかです。

 

 事件から23年後、捜索にかかわった7人の元刑事たちが「鴨居は確かに調べたが何もなかった」「後になって万年筆が見つかったと聞いて驚いた」と証言しています。



 発見された万年筆と被害者が使っていた万年筆のインクについて事件当時、科警研がおこなったペーパークロマトグラフィ検査結果(写真上右)。今回新たにおこなった下山鑑定結果(写真上左)。

インクが微量でも残れば②の結果になりますが、当時の科警研の検査結果にはまったく表れていないことが分かります。



事件と無関係の万年筆

  自白では石川さんは脅迫状を訂正したときに被害者の万年筆を使ったとしています。しかし訂正に使われた「万年筆」と石川さん宅で発見された「万年筆」が全くちがうことが明らかになりました。

  上の画像は、最近証拠開示された石川さん宅で発見された「万年筆」が被害者の物か調べるために被害者の兄が「数字」を書いた供述調書です。

 上の画像は、被害者宅に届いた脅迫状です。訂正された「五月2日」、「さのや」の文字と比較したところ、石川さん宅で発見された万年筆の文字と太さがちがうことが証明されました。

 上の画像は万年筆(パイロットスーパー)のペンポイントです。
 左から細字、細字、中字、太字のペン先です。
 石川さん宅で発見された万年筆は細字。脅迫状の訂正箇所に書かれた万年筆は中字であることがわかりました。
 発見された「万年筆」は事件とはまったく無関係のものであり、「秘密の暴露」は完全に崩壊したことになります。



警察のねつ造で

  石川さん宅で発見された「万年筆」は石川さんの自白と無関係の場所から発見されました。

  上の画像は、石川さんが書いた自宅の見取り図です。

 この略図をもとに発見されたことになっていますが、石川さんが万年筆を隠した場所を特定する記載はありません。

 

 開示された取り調べの録音テープには、石川さんが「万年筆」について「風呂場の入り口の敷居の上に今も隠してある」と言っていることがはっきり残っています。

 

 石川さんは家の見取り図を書いただけで、その略図に、石川さんが自白していないのに、警察官が後で勝手に線を引き、被害者の「万年筆」が自白通りに発見されたように装ったのです。

 開示された証拠から警察のねつ造が明らかになりました。