被害者の悲鳴は聞こえなかった

犯行現場にいた男性が証言

 石川さんの「自白」では、犯行現場とされる雑木林で「被害者は大声を出して騒いだ」ということになっています。

 事件から18年後の1981年に検察庁が開示した証拠から、犯行時刻にすぐ隣の畑で農作業をしていた人が「悲鳴を聞いていないし人影も見ていない」という証言が明らかになりました。
 

 その人は「事件当時から、本当にそこで犯行があったのだろうかと疑問に思ってきた。もしそこで被害者が悲鳴をあげたのであれば、私はそれを聞いたはずだが、そのような悲鳴は聞いていないし、犯人の方も私が農作業をしている音を聞いたはずだ」と証言しています。

 殺害現場からわずか20〜30メートルという至近距離にいながら、悲鳴も聞こえず、人影も見ていないという証言が明らかになりました。

 石川さんの犯行現場の「自白」は虚偽であることが明らかです。

ルミノール反応検査をせず?

 上の画像は、殺害現場とされる杉の木です。 

 「犯行現場においてルミノール反応検査を実施していない可能性がある」と検察官は主張しますが、事件の重要な証拠となる殺害現場でルミノール反応検査がなされなかったとは通常の捜査では考えられません。

 同じように被害者を縛ったとされる松林や被害者をつるしたとされる芋穴の2カ所については、当時鑑識にあたった県警職員からの聞き取り報告書でルミノール反応検査を実施し陰性だったことがわかっています。



手ぬぐい調書を改ざん

 被害者を縛っていた手ぬぐいは米穀店が得意先に配ったうちのひとつでした。石川さんの義兄宅には1本が配られていましたが、事件直後、石川さんからは手ぬぐい1本が警察に提出されています。

 犯行に使っているのならば石川さん宅には手ぬぐいは残っていないはずです。検察は「義兄宅または隣家から都合を付けて提出した」と主張し有罪の根拠としました。

 驚くべきことに開示された捜査報告書で石川さんの義兄宅に配られた手ぬぐいの数が「1」から「2」に書き換えられていました。石川さんを犯人にでっちあげるために改ざんされた疑いが極めて強いものです。

 犯行に使われた手ぬぐいと事件直後の新聞記事。



殺害方法がちがう

 狭山事件では殺害方法において、石川さんの「自白」と客観的事実がちがいます。自白では首を手で絞めて殺害(扼殺)したことになっていますが、被害者の首には柔らかい布のような物で絞めた(絞殺)ときにつく跡が残されていました。

 

 開示された巡査の取り調べ状況の報告書には、石川さんが巡査に死体がどうなっていたかと質問し、教えてもらえれば話せるなどと言っていたと記載されていました。


 殺人事件では死体の客観的状況と自白の殺害方法が一致しているかどうかということが、自白の信用性を判断するうえで非常に重要な意味をもっています。石川さんの「自白」が虚偽であることは明らかです。




石川さんの指紋が検出されず

 被害者を埋めるために使われたとされるスコップが死体発見現場付近の麦畑で発見されました。このスコップは被差別部落出身のIさんの養豚場のものとされ、石川さんが盗んで使ったとして有罪証拠のひとつとなっています。

 

 スコップが発見された翌日の新聞報道では、指紋と付着した土を調べていると報じられていますが、これまで指紋検査結果は一度も出されていません。犯行に至ったスコップだったならば指紋検査がおこなわれなかったとは考えられません。

 弁護団は証拠のスコップと類似するスコップの持ち手の木質部を握った場合、指紋が検出されることを証明した報告書を提出しました。

 上の画像は事件当日まで被害者が愛用していた自転車です。石川さんの「自白」では、被害者の自転車にのって脅迫状を届けに行ったことになっています。

 自転車の指紋検査がおこなわれたことは弁護団の当時の捜査関係者調査でも明らかですが、指紋検査報告書もこれまで開示されていません。